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2009年2月17日 (火)

仕事って。。。

Photo_5 朝の神田学士会館 日本野球発祥の地の碑がある

去年の秋のこと。会社で写真集を編集することになり、上司の指示で、わたしがレイアウトからいっさいを担当することになったとき、ある同僚はあきれたように言ったものだ。デザイナーでもないのに素人にレイアウトを任せるなんてねー。またある若い同僚はなぜかぷりぷりして、インデザインを使ったことがない人がデータ入稿なんかできるんですかと言うし、ある人は親切にも、素人がレイアウトをするときは、空間を生かして大きく配置すればいいと言いますよとアドバイスしてくれた。わたしに仕事を任せてくれた上司も、紙に定規と鉛筆でやればいいんだから、と励まし顔に言ったものだった。
 そのときわたしは、みんながわたしをなぜこんなにも素人扱いするのかと首をかしげた。確かにわたしはデザイナーではないし、ここの会社に入ってから間もないが、これでも40年近く書籍の編集作業に携わってきたのである。そのうち20年は原稿を書きまくっていたのだが、写真やイラストを割付して紙面を構成するのは編集の基本のキである。そりゃあいわゆる写真集なるものを作ったことはないし、DTPソフトを使うのも初めてだが、まさかできないってことはないだろう。いまさらパソコンから鉛筆を持ち直すなどという気はない。
 そうはいっても、インデザインというDTPソフトは印刷所がそのまま印刷用紙に出力して本にしてしまえる本格性を売り物にしているわけだから、レイアウト作業に使うだけといっても、操作はけっこうめんどうであるらしい。わたしはさっそくパソコンスクールの4回コースを受講し、とりあえず簡単な扱いを覚えることにした。あとはヘルプを見ながら手探りで紙面を作っていった。給料をもらいながらDTPソフトを練習できるなんて、わたしはラッキーである。一通り操作を覚えてしまえば、ディスプレイで自由自在に画像や文章を配置できるインデザインは紙と鉛筆よりずっと簡単で楽しかった。
 しかし難題はパソコン操作などではなく、著者から受け取った原稿にあったのだ。それこそ素人が撮った紙焼き写真や、解像度不足のデジタル画像。色かぶりあり、ピンぼけあり、アングルは傾き、ポイントは定まらず。それに加えて文字原稿には誤字がやたらに多く、用字用語、文体は不統一、文脈の混乱した自信過剰のどうにもならない文章。わたしが担当させられたのは、この会社で初めて請け負うという自費出版の本だったのである。次々に追加されて500枚を超える写真や画像を整理し、ご機嫌を損なわずにクライアントのとりとめのない要求を満たし、写真の難点をカバーし、意図を汲み取って文章を整理し、見栄えよくデザインし、細かい注文をきき、ゲラを印刷所と著者間で忍耐と根気で何度も往復させ、意思疎通を図り、微妙な色の出具合を繰り返しチェックし、いかに印刷物として鑑賞に耐える内容にもっていくか。わたしに課せられたのはこの難問だった。
 それから3か月。本ができあがったときには、わたしを素人扱いする人はいなくなっていた。人はこうして少しずつ自分の居場所を獲得していくんだな。わたしは今、培ってきた経験と新しい知識を総動員して、仕事を進めていくことのできるおもしろさを味わっているのである。

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2009年2月15日 (日)

焼き芋と詩人

Photo_2 桜草が咲いた090315

去年の8月以来久しぶりに森林公園ボランティアへ。
今日は昨日みんなが仕込んだ炭焼き窯を開くところから始めるいいとこどり。。開けてみると、炭は生焼けとすっかり灰になったところと、ちゃんと炭が出来たところと。地面に穴を掘っての窯だからそううまくは炭にはならない。火の強さとかまだ工夫が必要だが、何度かやってみるうちにうまくいくだろう。できた炭は少しずつ分けておみやげにいただく。そのあと伐採した木の枝を熾火にして焼き芋パーティ。表ぱりぱり中ねっとりのたいへんおいしい焼き芋をいただいた。
今回はボランティア仲間のYさんからたびたび電話をもらい、ごぶさたしていたのだががんばって出かけてよかった。内緒だが、彼をモデルにして詩を1編書いたことがある。そのYさんが珍しい桜草の苗を一鉢くださる。あなたと同じ名前の珍しい白の桜草だから、ぜひあなたに差し上げたいとおっしゃるのだ。そして桜草の図鑑を貸してくださる。それからYさん手描きのシンプルな野草の絵はがきを取り出し、自作の一句を添えてくださる。アカザで作ったお手製の杖もくださり、持ち手にわたしの名をペンで書いてくださった。なんて親切な人だろう。
数日後にまた別の絵はがきが届いた。
ギリシャの詩人の言葉が添えてあった。
野の花は
露が育てる
月と空との
   子だという
     ギリシャ抒情詩集より

彼と詩の話をしたことなかったけど、彼は詩人だったんだな。父と同い年でなければつきあってもいいけど・・・・・。

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2009年2月12日 (木)

料理教室

Photo_4 お食い初め でかい!

3年前までの数年間、月に1、2回通っていた料理教室、すっかりごぶさたしてしまったが、未習科目がいくつか残っていたのに気づいて久しぶりに教室に出かけた。仕事を終えてぎりぎりセーフ。エプロンも三角巾も用意していなかったが、快く貸していただく。この教室は自己都合で休んだ回は3年後まで受講できる。これが最後の機会だ。何十年も家族のために三度の食事を作ってきたが、時間に追われて料理を楽しむことも知らず、いいかげんな自己流ですませてきた。子どもたちが家を出て夫と二人になってから、これからの健康のために料理を基本からきちんと学びたいと思った。教室には主婦修業の若い女性たちばかりでなく、わたしのような動機で来る人も案外多い。数人であれこれと声を掛け合いながら作業を進めていくのは楽しかった。家では目分量で調味料を使っていたが、きちんと量って調味することの大切さを知った。バランスのよい献立。あくをこまめに取ること、おいしい出しの取り方、肉・魚のドリップを抑えるコツ。魚のおろし方、烏賊の皮の剥き方、美しい盛りつけ、数種類の料理を同時進行で下ごしらえから段取りよく調えていくコツを教わった。ああそれなのに、このごろは毎日帰宅が遅く、ろくすっぽ料理もしない生活なのはなんだか皮肉である。でも学んで無駄になったことは人生にない。あと数年もすればこの勉強もきっと役に立つ日がくるだろう。

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2009年2月11日 (水)

走るなり

Img_0147 森林公園完走マラソン大会10キロコースに挑戦した。
 国営森林公園開園の年から毎年開催されているというマラソン大会は、急がず完走を目指す精神でゴール制限時間が緩く、わたしのようなスピードのないランナーにぴったりである。80歳を超えたおじいさんもいる。ブームもあって今年は去年の1,5倍、4500人の参加者だそうだ。わたしはいつもボランティア活動で森林公園に来ているが、そのときお世話になる公園企画課のスタッフも、今日は総出で手荷物係として働いている。今年は案内係や記録係など、学生らしい若者たちが大勢スタッフとして手伝っているのが目立った。
 武蔵野の野山をそのまま残した園内を一周するコースはアップダウンを何度も繰り返し、ときには砂利道も登る、難しいがおもしろいコースである。去年参加したときは、生まれて初めてのマラソン大会エントリーで、5キロを走るのもどきどきものだった。それが今年は10キロエントリーだから、成長著しい。前をたったったとハイピッチで駆けていくのは小柄なおばあさんだ。おしゃべりしながらたらたらと走る夫婦らしい二人連れ。ペースを上げすぎてぜいぜいしながら坂を這い上がる若者もいる。わたしは上り坂を歩くことなく10キロを同じテンポで走り通すことができたのはほんとうにうれしい。結果は1時間14分で完走。トイレタイムをとらざるを得なくなったので数分ロスしたが、ほぼこれまでの1時間10分ペースを守れたと思う。人間は幾つになっても進化するものなのだなあ。

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2009年2月 3日 (火)

変な会話

Photo_3 黒目川のコサギ

駅まで川沿い2.5キロを走るのを日課にしている。コートの中はトレーナー一枚だが、真冬でも吹き出す汗でびっしょりだ。顔もびしょぬれになるのでメイクもできない。走った勢いで電車に飛び乗ると、さらに10分は汗が出続ける。髪から水がしたたる。ああ脂肪が燃えている。気持ちがいい。
すると、
「あ、どうぞこっちに座りませんか。」
後ろからいきなり声をかけられた。振り向いて驚いた。自分の席から立ち上がってわたしに席を譲ろうとする男がいる。
「いえいえ、結構です。」わたしは手と首を振る。
「あ、でも、どうぞ。」男は親切そうにほほえんでいる。
「ありがとうございます。だいじょうぶですから。」当惑しつつふとわたしは男に尋ねた。
「でも、どうして? なぜ、わたしに席を譲ろうと思ったの?」
「いや、そうしたほうがいいのかなと思って。」
男は座ってからとまどったように答える。わたしは自分の格好に改めて気づいた。いつもは首にタオルをかけて走り、電車の中で吹き出す汗を思い切りごしごし拭く。今日はうっかりタオルを忘れてしまったので、普通のハンカチを取り出して首の辺りを拭いていたのだ。
「あ、汗を拭いていたから? わたしの具合が悪いと思ったんですか?」
「ええ、まあ。」
「どうもありがとうございます。駅まで3キロ走ってきたので。」(ほほえみ)
すると男は付け加えた。
「それに、わたしの母は77歳だけどとても若く見えるので、、、」
それを聞いてわたしは思わずむっとした。
(母? 77歳? わたしがこの人の母といっしょ?)
「わたしは何歳に見えます?」思わず詰問調。
「見かけは54、5に見えるけど本当はどうかな?」男はもっともらしく首をかしげる。
「58です。サバよんでません。」(ひきつったほほえみ)
向こうの女性が少し口の端をゆがめて笑いをこらえるのが見えた。いつもは話し声も聞こえない朝の通勤電車である。
「わたしはどうも目が悪くて、ちゃんとあなたを見なくてごめんなさい。」男はなおも言う。
「すごいなあ、わたしはとても3キロは走れない。」
わたしは少し後退した男の額を眺める。
「でも、あなただってわたしとあまり変わらないでしょう。」
すると男は憮然として言った。
「いや、わたしは50は超えていますがもっと若いです。」
二駅分の間こんな会話をかわし、男の席の隣が空いたので座ると、男はくどくどと話し始めた。
「実家がこの辺なので久しぶりに来たんです。母はほんとに若く見えるんです。目が疲れるんでわたしはパソコンもできないんですよ。それに電車で携帯を使う人が嫌いで。。。」
「え、別に話してなければいいんじゃないですか。わたしたちのほうがうるさくて迷惑かも・・・」
わたしはそれきり会話を打ち切って携帯を取りだしてメールをチェックした。しばらくすると、男はわたしたちの目の前に立っていた中年女性の二人連れに話しかけた。
「その手提げ袋の花の刺繍はとてもきれいですねえ。」
手提げを持っていた女性は笑って
「あら、ありがとう、これ友達が作ってくれたの。」
二人の女性と男の会話はひとしきり続いた。

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2009年2月 1日 (日)

二月吟行句会

Photo_2 新宿御苑

水仙の香り沈める窪地あり(木履)

ムクドリの嘴長し日脚延ぶ

逆光の人微笑むらしき冬

開かずの戸秘密の花園春近し

家なき子母にも会へず寒波来る

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